それは、二人で交わした約束。

幼い日の思い出。

遠い日の、不確かな未来への約束。

 

 

「・・・・護る?」

「そうだよ」

小指を差し出して、そして微笑いかける。

「君がこの国を・・・・この世界を護るというのなら、僕は君を護ってみせる」

「・・・・・」

差し出された指を不思議そうに見つめる。

その小指に自分の指を絡ませることができずに、戸惑いの眼差しだけを『彼』へと向ける。

「そんな約束・・・・無理でしょう?」

『彼』に『自分』を護ることはできない。できるはずが、ない。

「貴方がいるこの国を、私は護るの。貴方に護られていては・・・・意味がないでしょう?」

この世界を護るということ。それは、彼をも護るということだ。

首をかしげて困ったように言う『少女』。

そんな彼女の膝に置かれた手をそっと持ち上げて、その小指に自分の指を絡ませる。

「護るよ、絶対に」

「・・・・・・」

離れようとした『少女』の指をしっかりと絡ませて、そしてゆっくりと言葉を紡ぐ。

言葉が真実になるように、言霊に想いを乗せて。

「君はこの国のために全てを犠牲にするんだろう?」

護るということ。

それは、生半可な覚悟でできることではない。

「君がもたらす犠牲の上に、この平和が成り立つのだとしたら、そのために僕ができることは、

それしかないから」

だからこそ、『彼』は思っていた。決めていた。

そんな『彼』の思いが邪魔なわけでも、嬉しくないわけでもなかった。

この先に待つ運命と人生に彼という存在がいてくれることは何よりの励みであり、そして何よりも

嬉しいことだった。

「だから、一つだけ約束してほしい」

「・・・・・約束?」

聞き返した『少女』に『彼』が微笑む。

「一人で全てを抱え込まないでほしい。君が、僕の知らないところで悲しんで苦しんで悩んでいるとしたら、

それが一番つらいから。だから、何かあったら自分で決めずに僕を頼ると。そう約束してくれないか?」

「・・・・・・」

小さく、寂しげな笑みを浮かべて、そして目を伏せる『少女』。

小指が絡んでいるその手を、もう片方の手でそっと包み込むように握る。

「・・・・・ありがとう」

 

 

遠き日の約束。

その約束は果たされることなく終わる。

国を護るために、『少女』はその身を犠牲にした。

彼女自身の犠牲が、平和と安寧を失いかけていた国に、新たな平和をもたらした。

人々は彼女の死を悼み、そして涙を流した。

そして・・・・・。

 

「嘘つきだな、君は」

何もなくなった大地で、そう呟く。

約束を交わした日が、昨日のことのように思い出せる。

約束を交わしたその場所で、けれどもその相手はそこにはいない。

萌えるように咲き誇っていた花々は枯れ、その場所は見る影もないほど無残にその姿を変えてしまっていた。

まるで、二人が交わした約束が、果たされなかったその結果を示すかのように。

「護るって・・・約束したのに」

護れなかった。そして、護られなかった。どっちの方が悲しいのかはもう分からなかった。

けれど、一番悲しかったのは、『彼女』という存在を失ってしまったこと。

もう戻らない。

彼女の笑顔を見ることはなく、声を聞くこともない。

この腕に、抱きしめることも、もうないのだと。

そのことが、つらく悲しかった。

「・・・・・君が護ったこの世界を、俺は護らなくてはいけない」

約束を交わす相手はいない。けれど、あの日と同じ、澄み切った青空を眺めて呟く。

「護ってみせるよ、この世界を。・・・・・俺の力の続く限り」

 

 

 

 

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はい、というわけで・・・・(笑)
基本的に悲しい話とか不幸な話とか誰かが死ぬ話は大好きです。
どちらかというと、こういうネタの「その後」を書くのが好きです。
ハッピーエンドに向けて〜みたいな(苦笑)
基本はハッピーが好きなんですけどね。でも、不幸で不幸での先のハッピーが一番好きです。
この話も、どっかに続きがあるのかもしれません。でも、また別のお話ということで。