ジルトは、いわゆる『トレジャーハンター』という仕事をしている。
このご時勢ではそれほど珍しい職業でもない。
依頼を受けてお宝を探し、報酬をもらう。あるいは自ら見つけたお宝を売りさばいて金にして生計を立てる。

「ジルくんは便利屋なんだよね」
「トレジャーハンターと言え」

そう問いかけてくる悪意のない笑顔に、きちんと訂正を入れることは忘れない。
とある町の、寂れた居酒屋。そこの小さなテーブルで遅がけの朝食をとっているジルトと相棒のシエラレオネ。
ちなみに彼女はまだ10歳。居酒屋に入っていい年齢ではないのだが。

「うまいか?」
「おいしいよ」

飲み物はジュース。あとは野菜や肉の乗ったプレート。
ジルトの前には、酒の入ったジョッキとつまみ。そして大きな世界地図。
朝食にしてはかなり豪華だ。
けれど、昨日この町からの依頼を果たしているので、心ばかりのお礼ということなのだろう。

「今日はどうするの?」

もさもさと食事をしながら尋ねてくる少女、シエラレオネに。
手にしていた酒を置いて、広げていた地図を眺める。

「そうだなぁ」

用事は終わった。
次に行く場所がいつも決まっているわけではない。
気の向くままに旅をして、そしてお宝を集めていく。
もう何年も、ジルトはそうして生活をしていた。

「シエラはどこかいきたいところあるか?山とか海とか森とか」
「ジルくん、その質問は微妙だよ」

10歳とは思えない的確なツッコミ。

「でも、海は見てみたいかな」
「海、か……」

そういえば最近は陸地ばかりだったなと。
基本的にお宝があるといえば、洞窟だとか遺跡だとか、そういうところが多い。
情報収集は村や町で行うので、行き先も限定されてくる。
なので必然的に陸上で活動することになるのだ。

「海の中にもお宝あるかもしれないよー?」
「……」

たぶん、彼女にとっては何気ない一言なのだろう。
けれどその言葉は、ジルトに妙に引っかかるものがあった。

「海の中、か……」

地図を眺め、ここから一番近い港と、その先日広がる海を探す。

「近いのは、東の海域……。そういえば東はあまり行ったことはないな」

この世界は、いくつかの大陸でできているので、もちろん海もいくつか存在している。
旅をして長いので、大陸の移動時には海を渡ることもある。
海に浮かぶ島などにいくことも時々ある。
けれど、海そのものという考え方は、今まで彼の中にはなかったと気づく。

「……お前、炎系か雷系の魔法は使えたか?」
「使えるよー」

彼女が、10歳でありながら相棒に納まっている理由の一つは、幼いながらに優秀な魔法使いだということだ。
少女特有の性格と、その力に。
正直一緒に旅をしてから助けられることも少なくはない。

「……よし。いってみるか。とりあえず、海」
「うん、とりあえず海ね」

自分の要望が通ったからか。
嬉しそうに頷いて、急いで食事を終わらせようとフォークを動かすシエラレオネに。
今度は目的とするもの、あるいはその手がかりだけでも見つかるといいなと。
気づかれないようにため息をついた。