「おはよう」

小鳥のさえずり。まぶしいくらいの太陽。

まるで、この世界のどこにも闇などは存在せず。輝く光の世界が広がっているような。

昨日までの自分は、悪夢の中の住人で。

目覚めるとそこは、暖かで平和な世界でした。

そう言われたら、きっと信じてしまいそうな朝に、かすかな一点の曇りを見つけて目を細めるアディス

の背後から、聞きなれた声と言葉がかけられた。

振り返るとそこには辛苦を共にした戦友が、先程まで自分に見えていた曇りを振り払い、これから向かう

先がまるで自分の信じる未来を思わせるような、優しい微笑を浮かべて立っていた。

彼女、ルーシリアはいつもそうだ。

不安を口にした次の朝には、もう未来を信じていて。

励ましたはずの自分が、闇から抜け出せないでいる。

そして結局いつも励まされてしまうのだ。

「よく眠れた?」

「・・・・あぁ」

「うそばっかり。あなたがこういう時、よく眠れているはずないわ。もうどの位の付き合いになると

思ってるの?」

「・・・・・」

「でも、大丈夫。よね?」

見透かされる不安。それを拭い去る笑顔。

多分彼女がいなかったら、今日のこの日は永遠に来なかった。

覗き込む瞳に、決意を引き出されて。

今度は確かに、深くうなずく。

「あぁ、行こう」

 

安らぎと悲しみの場所。

大切な家族と、大切な民の暮らした場所。

大切な家族と、大切な民を失った場所。

すべての始まりの場所。

そして、この場所がすべてを終わらせる場所。

寂れた神殿、小さい頃から不思議に感じていた6つの台座。

その中心に立って、アディスは瞳を閉じた。

決意を感じ取ったかのように無意識のうちに握り締めていた水晶から、熱を感じる。

呼ばれている。

あいつに。

高圧的な瞳。余裕の笑み。だけどどこかいつも愁いを帯びたあの男。

「封印が解かれる・・・いよいよね」

そっと水晶を握り締めるアディスの手にその手を重ねて、ルーシリアはいつもと変わらない笑顔を

向けた。

瞳を開いてその笑顔に答え、アディスはゆっくりとその手を開く。

途端に手のひらの中から眩しいほどの光と共に、水晶が飛び出す。

そう、それぞれの役割を果たすために6つの台座へ。

「封印の解除を望む。水晶よ、俺達を『隠された聖地』へ導け」

アディスの言葉に反応するように、台座に納まった水晶から洪水のように光が溢れ出し。

そして二人は光に包まれた。


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