「私と一緒に行かない?」

 

すべてを失い、すべてに絶望して、立ち上がることができずにいたアディスに。

そういって、手を差し延べてくれた。

そのときの笑顔と、手のぬくもりと。

彼女の後ろに見える影の存在にも気付いてはいた。

けれど、それは彼も同じだったので。

 

 

その手を取って、立ち上がった。

 

 

『歯車』

 

 

出会いは偶然か必然か。

「そういえば、名前聞いてなかったわね」

「…アディス、だ」

「アディス、ね」

彼女は、名前をルーシリアと優しく笑いながら名乗った。

年は変わらないぐらいで。目線が、自分より少し低い少女。

それまで彼の周りには年上の女性が多かったので、ひどくその存在が珍しくて。

けれど不快ではないことに驚いてた。

「アディスは、王子様なのよね」

「…そんなたいそうなものじゃない」

尋ねられた呼称に、首を横に振る。

滅びた国の、すでに皆の記憶から消し去られているであろう国の王子であることに意味があるのかと。

「まぁそうかもしれないけど」

苦笑が浮かべられ。

「いいじゃない?事実なんだし、そこは誇っていいと思うんだけど」

「…俺一人だけ、生き残った」

立ち止まり、うつむいて、手を固く握り締める。

数歩遅れて立ち止まったルーシリアが、振り返る。

「皆を犠牲にして俺は生き残ったんだ。父上も母上も、国の者たち皆が死んで…俺だけが、生きてる」

生きなくてはいけなかったから。

それは血を絶やさないため。いつかかわりに、彼らの恨みをいつか晴らすために。

希望として、生きなければいけないその責務と、逃れられぬ運命が。

アディス自身をがんじがらめに縛り付けている。

それともう一つ。・・・・生かされたのだということも、わかってはいた。

敵であるあの男によって。

記憶の中にいるその人物は、強くて、恐ろしくて、そして・・・。

「そんな難しく考えなくてもいいんじゃないかしら」

そっと。握り締めていた手に重ねられた白く細い手。

触れた部分から伝わる温もりが、沈んでいた気分を浮上させていく。

心を覆い尽くしそうだった影を、一瞬で取り払うような、優しい、暖かい光のような温もり。

顔を上げると、そこには優しく微笑むルーシリアの顔があった。

「確かにそうかもしれないけど、でも…みんなが生きてほしいと願って、そうして生き延びた命なんだから」

死ねばよかったとか、どうして生き延びてしまったのかとか。

マイナスに考えてはいけないと諭されているのだと気づく。

「がんばって生きればいいんじゃないかしら?敵とか、皆の思いとか、そういうのは少し置いておいてね」

口先だけならなんとでもいえるだろうと、彼女の言葉を否定することも、その時のアディスにはできた。

けれど、なぜか彼女の言葉には、重さがあった。

当事者でなければいえないような、言葉の重みと込められている思いの強さ。

「お前……」

「…うまくいえないけど、まぁそういう感じ」

微笑んで。そして。握り締めていた手が、強く握り返される。

 

 

彼女も、同じ国を失った立場で。

ただ、背負っている重さが違うと思っていた。自分は王子で、彼女は平民で。

国がなくなってしまえばそんなものは関係ないのだが。

けれど、どこかで気づいていたのかもしれない。

彼女も、同じような立場にあって、生き残ってしまった存在なのだと。

多分自分たちはものすごく似ているのだと。

 

真実を知るのは、もう少し先のこと。





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で、何が書きたかったのか・・・・出会い?なのか?という感じですが。
アディスくんとルーちゃんの出会いのような・・・出会ってしまってる?(笑
一応はるかさんが絶対に敵サイドを書き続けると思うので、私は味方サイドを書き続けようと思っています。
頑張ります。


でも、打ち合わせナシに書いてるので、矛盾が生じそう・・・・・