突然降り出した雨。

出会いも突然だった。

すぐにやむだろうと予測した通り雨。

とりあえずひときわ大きな目に付いた木の陰で雨を凌ぐ。

「・・・・・?」

服についた水滴や、多少含んでしまった水分を払い落とそうとして、ふと視線を落とした先。

『・・・・・ギ』

かわいらしく、というべきか。

自分を見上げている瞳。

灰色の空と、降り続く雨と。

殺風景な景色の中で、そこだけが切り離された空間のように現実味がない。

真っ白の体と真紅の瞳を持つそれは、まっすぐに彼を見続けていた。

「竜、か?」

とりあえず、しゃがみこんでみる。

それでも目線が同じになることはないのだが、それでも少しは視線が近づく。

『ギ?』

つぶらな瞳。

顔のほとんどの面積を占めているような大きな瞳が、何か言いたげに彼を見ている。

「・・・・うん、分からない」

人語じゃなければ解せるはずがない。

しゃがみこんだ、自分の膝に肘をついて、そしてため息をつく。

肩に乗せたらちょうど良いぐらいの大きさの竜。

子供なのか大人なのかは分からないが。

けれど、逃げる様子もなく、明らかに意思を持って彼を見ている。

「えーっと・・・・」

頭に生えている小さな角。その角の間に手を入れて、よしよしと撫でてみる。

『ギー・・・・』

気持ちよさそうに閉じられる瞳。

予想外に手触りのいい肌と、甘えるような仕草。

人慣れしていることに正直驚きを隠せなかった。

『竜』自体は、この世界では珍しいものではない。

けれど、特定の場所に生息しているか、王宮の竜舎などで飼われているかが普通なのだ。

こんなはぐれて一人でいる竜というのは、珍しいもの以外ではない。

見つけた人によっては、そのまま売りに出されたりされてしまうだろう。

「お前、一人か?仲間は?」

『ギ?』

パチリと目が開けられる。

『ギー・・・・・ギギギ?』

「やっぱ分からないよなぁ」

何かを伝えているということは、視線から分かった。

どういう意図でここにいるのかは分からない。

というより、自分がこの木陰に入った時、この竜がいたのかといわれると、それ自体が疑問でもあった。

「どうしたものかなぁ」

手を離して、そしてしばしその竜を眺める。

雨が少しかかったのか、ぶるぶると水を払うように体を振るわせる竜。

正直、可愛い。

その様子に、さらにどうしたものかと考える。

「お前・・・俺と一緒に来るか?」

『・・・・・ギ』

ぴたりと、動きが止まる。

今更だが、どうやら竜のほうは人語を解しているらしい。

「お前さえよければ、なんだけどな。仲間がいるならそのほうがいいだろうけど、もしそうじゃないなら

・・・・この世界は、お前たちにとってはあまりいい世界とはいえないだろう?」

人にとっても、住みよいといえる世界でないだろうということは思っていた。

ましてや、『竜』などであれば、利用されるだけされるのがオチだ。

売れば、高値になる。

うろこから肉まで、何とでも使いようがあるのだ。

人通りの多い街道沿い。彼が去った後の、身の保証はしかねない。

「俺のところにきても、いいことあるかはわからないけどな」

断言はできない。

ただ、本当になんとなくだが、ここで見捨ててしまうのはかわいそうな気がしたのだ。

運命、などというつもりはない。

それでも。

『・・・・ギギ』

こくりと首をかしげ、言葉を吟味しているかのようだった。

そして。

『ギ』

ひょいっと、肩へ飛び乗る。

「くる、のか?」

『ギギ、ギ』

頬に、首が摺り寄せられる。

同意ととって間違いはなさそうなその仕草に、そうかと頷いて立ち上がる。

それまではなかった重み。

けれど、それは嫌だとかつらいとか、そういうものではなかった。

暖かく、心地よい重み。

思わず、口元に笑みが浮かぶ。

「ああ、やんだな」

いつのまにか雨がやみ、そして空から日差しが差し込み始める。

「俺は・・・・ロットっていうんだ」

『ギ?』

癖なのか、再び首をかしげて、至近距離にある彼の、ロットの顔を見つめる。

『ギギ、ギーギギ、ギ』

「・・・・わからないよなぁ・・・・」

必死に語りかけてくれているのは分かる。

思わず苦笑して、そして帰ったら竜語の分かる人間に話をしてみようと考える。

とりあえずは、意思疎通は図れているみたいだから問題はないだろうと。

そう結論付けて、木陰から足を踏み出す。

「じゃあ、行こうか」

『ギ』

 

 

 

 

 

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なんなんでしょう、なんなんだろう?(笑)
いや、お題が「雨」だったので・・・・そしてファンタジーの短編だよなぁと考えたら
こうなりました(だから何故!?)
いや、こうじゃなかったら、次に来るのはこうシリアスな恋愛ネタになりそうで・・・・
とりあえず、かわいらしい話が書きたかった、みたいな。
というか、自分で書いてて「かわい〜な〜、コイツ」と思いました。。。
裏ネタというか、背景設定はいろいろ思いついているんですが・・・・
しかし『竜語』って・・・・・